神経細胞の脱分極について

 


神経細胞は、神経伝達物質によって情報を伝えるための特別な細胞です。神経細胞は、細胞体、樹状突起、軸索、および神経終末から構成されています。神経細胞が情報を伝達するために、電気的信号を使います。この電気的信号は、神経細胞の膜上に存在するイオンチャネルを通じて発生します。

神経細胞の膜には、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、およびクロールイオン(Cl-)が存在します。これらのイオンは、神経細胞の膜を通過することができます。神経細胞が情報を伝達するために、イオンチャネルを通してイオンを流入または流出させ、膜の電位を変化させます。

神経細胞の膜の電位は、膜電位と呼ばれます。膜電位は、神経細胞の内側と外側のイオン濃度の違いによって生じます。神経細胞が静止しているときは、膜電位は約-70ミリボルト(mV)です。この状態を静止膜電位と呼びます。

神経細胞が興奮すると、神経細胞の膜に存在するナトリウムイオンチャネルが開き、細胞外からナトリウムイオンが細胞内に流入します。ナトリウムイオンの流入によって、神経細胞の膜電位は正の方向に変化します。この状態を膜の脱分極と呼びます。

膜の脱分極は、神経細胞が情報を伝達するための信号であり、アクションポテンシャルと呼ばれます。アクションポテンシャルは、膜電位がしきい値を超えたときに発生します。しきい値を超えると、ナトリウムイオンチャネルが急速に開き、ナトリウムイオンが細胞内に流入します。

このようにして、神経細胞は脱分極を起こします。脱分極が起こると、神経細胞の細胞膜にあるイオンチャネルが開いて、ナトリウムイオンが細胞内に流入し、細胞膜の内外の電位差が逆転します。この逆転した電位差をアクションポテンシャルと呼びます。アクションポテンシャルは、神経細胞の軸索を伝わって、神経細胞の末端にあるシナプスと呼ばれる終末に到達します。

シナプスでは、神経細胞の末端から神経伝達物質が放出されます。神経伝達物質は、シナプス間隙と呼ばれる微小な隙間を越えて、次の神経細胞の細胞膜にある受容体に結合します。この結合が信号の伝達を担います。

脱分極によるアクションポテンシャルは、神経細胞に信号を伝える主要な手段の一つです。しかし、癲癇のように異常な神経活動が生じる場合、脱分極が異常に起こることがあります。その結果、脳の神経細胞が異常に興奮し、過剰なアクションポテンシャルが発生します。これが、てんかん発作が起こる仕組みの一つです。

また、神経細胞の脱分極が起こることは、それ自体が癲癇のトリガーとなることがあります。例えば、脳の血流が不十分になることで、神経細胞に必要な酸素や栄養素が不足すると、神経細胞の脱分極が起こりやすくなります。また、ストレスや睡眠不足、アルコールの摂取なども、神経細胞の脱分極を引き起こしやすくなることがあります。 さらに、神経細胞の脱分極が異常に起こることは、発作を引き起こすだけでなく、脳の神経回路の機能にも悪影響を及ぼすことがあります。例えば、脳の特定の領域で脱分極が頻繁に起こると、その領域の神経細胞が過剰な興奮を繰り返すことで、その領域の神経細胞同士のつながりが変化してしまうことがあります。これによって、正常な神経回路の機能が損なわれ、持続的なてんかん活動が生じる可能性があります。 以上のように、神経細胞の脱分極は、癲癇の発作や持続的なてんかん活動の原因となることがあります。また、神経細胞の脱分極を引き起こす様々な要因が存在するため、てんかんのトリガーを正確に把握することが、てんかんの治療や予防にとって非常に重要です。